注目の外来動物たち
人間の活動によって、本来生息していなかった場所に持ち込まれた動植物を「外来種」といいます。外国産のものだけでなく、国内の別の地域から持ち込まれたいきものも外来種です(「国内外来種」と呼ばれます)。
悪者扱いされることの多い外来種ですが、持ち込まれた環境で懸命に生きているだけであり、いきもの自体に罪があるわけではありません。しかし、なかには、その場所の生態系のバランスを壊してしまったり、農作物を食害したりと、大きな問題を引き起こしてしまう場合があります。
そのような場合にはその外来種の増加や分布の広がりが、地域の生物多様性を脅かす要因のひとつになってしまいます。地域固有のいきものを守るためには、その地域のいきものと外来種を知り、できる限り外来種の移動を手伝わないようにすることが大切です。また、外来種の侵入を早期に発見し、適切な対策をとらなければなりません。
そのために、皆さんのチカラが必要です!
なるべくたくさんの人が、広い範囲を監視することで、外来種の発見確率が高まります。
必要なものは、今お持ちのスマートフォン。外来種を見つけたらBiomeで投稿して、情報を集めましょう!
グッピー
南米のベネズエラからギアナが原産のカダヤシ目カダヤシ科に分類される魚で、温泉や工場排水が流れ込む温かい水域に生息します。観賞魚として日本に持ち込まれた個体が放流され、現在では沖縄のほか、本州から九州の温泉地などに定着しています。
卵胎生で繁殖力が強いことから「ミリオンフィッシュ」の別名をもちます。その生命力で、日本のメダカなど小型の在来魚と餌やすみかを巡って競合し、在来種の生存を脅かすことが問題となっています。

ハクビシン
鼻から額にかけて伸びる白い模様が特徴の、食肉目ジャコウネコ科の哺乳類です。中国大陸原産で、都内では1980年に八王子市で初めて報告されました。
ハクビシンは冬眠せず、秋から冬にかけては外よりも暖かい民家の屋根裏や床下のような場所で暮らすことが多いため、天井裏などでの糞害をもたらす場合があります。また、木登りが得意で、果樹の高い場所を食害することもあります。

ガビチョウ
スズメ目チメドリ科の鳥類で、丘陵地や平野部の低木林や竹林、藪の中に生息します。中国や東南アジア原産で、日本ではペットとして移入されたものが逃げ出し、定着しています。
鳴きまねが得意で、ほかの鳥の声を取り入れながら複雑なさえずりをします。この鳴き声が非常に大きいことから、騒音としてとらえられることもあります。

ムネアカハラビロカマキリ
中国を原産とするカマキリ目カマキリ科に分類される昆虫で、樹林や公園、街路樹などの樹上で生息します。中国から輸入される竹箒に付着した卵鞘(らんしょう)によって2000年頃に八王子市に侵入したとされています。
在来のハラビロカマキリに対する顕著な侵略性と、その拡散の速さから、近年定着した外来昆虫の中でも特に深刻な問題となっています 。

クサガメ
カメ目イシガメ科のカメで、都内では18世紀末頃に朝鮮半島や中国大陸から人により持ち込まれ定着したとされている外来種です。加えて、近年では、養殖されペットとして飼育されていたクサガメが野外に放出されるという課題も抱えています。本種は他のイシガメ科と交雑可能で、東京都本土部では絶滅危惧ⅠA類であるニホンイシガメとの交雑が特に問題視されています。
都内では、池や湿地、流れの緩やかな水路や流れなどに普通に生息しており、捕まると独特の臭いを出します。背甲に3本の隆条、側頭部と頸に黄緑色の斑紋があるのが特徴ですが、成熟したオスは黒化して黄緑色は消えてしまいます。よく似たニホンイシガメは、甲羅の縁にノコギリ状の深い切れ込みがあるので、クサガメと見分けることができます。

キタリス
ユーラシア大陸に広く分布するリスの仲間です。ニホンリスより大きく、耳介の先に生える毛が長いことが特徴です。ニホンリスの特徴である目の周りの白いリングはありません。ペットとして輸入されたものが野生化したと考えられており、狭山丘陵では2000年頃に野生化個体の記録があります。在来種であるニホンリスとの交雑が心配されており、特定外来生物に指定されています。
2014年頃より環境省事業として、研究者や周辺自治体、緑地管理者等の協力を得ながら生息調査や捕獲対策が進められてきました。2017年までに目撃情報数等は著しく減少しましたが、引き続き、キタリスが狭山丘陵内にまだ生息しているかどうかなどのモニタリングを継続することが求められています。
詳しくは下記ページをご覧ください。
キタリスを見かけたらご連絡ください。|瑞穂町

実践しよう!外来種対策
東京都は2025年9月、「東京都外来種対策リスト」及び「東京都外来種対策行動の手引き」を公開しました。リストには生態系や人間の生活等への被害が大きいと考えられる侵略的外来種が掲載されており、手引きには外来種対策の考え方や取組手法などのポイントがまとめられています。
外来種の被害を防止する三原則として、これまで、「入れない」「捨てない」「拡げない」というフレーズが提唱されてきましたが、今回公開した手引きでは外来種の被害を予防する三原則として、新たに東京都版「外来種対策行動3原則」を追加しています。
Ⅰ いちはやく『見つける』
侵略的な外来種の早期発見に努め、分布の拡大を防止することが大切です。
Ⅱ 被害を『減らす』
地域の特性や定着段階に応じた対策を進め、被害やリスクを減らすことが大切です。
適切な手法のもと地域の主体と連携し、効果的な実践を推進します。
Ⅲ 取組を『広げる』
取組に関わる主体と情報交換しながら、対策もバージョンアップしつつ継続することが大切です。
また、成果も共有しながら取組みの輪を広げていきます。
この秋は外来種を見つけるだけでなく、被害やリスクを減らす外来種対策を実施してみる、そしてその取り組みを調査団の内外へ広げる、などの一歩進んだ行動をしてみませんか。
ぜひ手引きをご一読いただき、東京のネイチャーポジティブの実現に向けて、一緒に取り組んでいきましょう!
